経営理念の作り方。ミッション、ビジョン、バリューなど企業理念で知っておきたいこと

経営理念の作り方。ミッション、ビジョン、バリュー

ミッション、ビジョン、バリューの3つはMVV(Mission/Vision/Value)と略されるように3点セットとして経営理念の中核になるものです。

社会変化や企業フェーズによって、徐々に思考が成熟されていったり目線が上がったり、事業ドメインが変わったりなどしていく過程で、経営理念を見直す必要もありますので、経営者はずっと考え続ける必要があります。

経営理念ってどうやって作るのか?どう考えたら良いのか?意外と参考になる記事や本がまとまっていないなと感じたので、今回はミッション、ビジョン、バリューなど経営理念を考える際に知っておきたいことをまとめてみます。

ミッション、ビジョン、バリューの定義問題

まず、定義問題から整理しましょう。ウェブ上やソーシャル上の議論をざっと眺めてみると、2つの説があるようです。


ミッション、ビジョン、バリュー派:
ミッションは存在意義・使命、ビジョンはミッションを達成する上で自分たちがどうなりたいか(目指す姿)、バリューはビジョンを実現していく上で大事にする価値観。

ビジョン、ミッション、バリュー派:
ビジョンは、どういう社会にしたいか(社会ビジョン)、ミッションは社会ビジョン達成のために自分たちは何をなすべきか?、バリューはミッションを実行していく上で大事にする価値観。

といった具合です。どちらも実は言っていることは近いようにも思います。

後者の社会ビジョンが先に来るべきであるという主張をする派の意図としては、ミッションが社会に向いていない、自分たちゴトに閉じてしまっているケースを批判的に見るからかもしれません。

例えば、ミッションで「世界No.1を目指し、従業員の幸福を追求します」と書かれていたら、どんな社会を作りたいのか?という突っ込みを入れたくなります。自分たちがどうなるか?しか書かれてないからです。

ミッションがちゃんと社会に向いている状態の社会ビジョンに近いミッションを掲げていれば、ミッション、ビジョン(自分たちが目指す姿)、バリューの順番で考える、ということで誰も違和感ないのではないでしょうか?

ミッション=社会ビジョンに近い」という立脚点をまず前提にしませんか?という提案です。

社会を、世の中をどうしたいか?を含む社会性のある世界観を持ったミッションを掲げる会社が増えることで、事業を通して世の中を良い方向に変えて行くというムーブメントにつながりますし、働く人にとっても、より魅力的な会社が増えるのは良いことだと思います。

ミッション(存在意義)は外向きの方がうまくいくと思う件

「ミッション=社会ビジョンに近い」という立脚点に立ちませんか?と言いましたが、実際にはミッションが社会ビジョンになっていない例は散見されます。

私は内向きか外向きかという言い方をしているのですが、内向き=自分たちがどうなるかを語っている、外向き=社会、世界がどうなるかについて語っているという違いがあります。

ミッションは内向きでも良いじゃないか?外向きである必要あるの?という方もいるかもしれません。たしかに、「最高のチームを創ろう」とか「世界No.1になる」とか「自分たちが幸せになる」というミッションがあっても、社内のメンバーは動機形成されることもあるかもしれません。

でも、想像してみてください。外国の人たちから見たときに、日本からやってきた会社がその国の市場に参入しようとしたときに、「君たちはどんな会社なんだ?」と聞かれ「世界を代表する会社になる」と言っていたら、「いやいや、勘弁してよ」と思うんじゃないですかね?

対照的にGoogleは、世界中に進出する際に、「Googleです。世界中の情報を整理して、アクセスしやすくします」と挨拶することになり、各地で「それは良いことですね。是非やってください」と歓迎されやすかったのではないでしょうか?

※実際にはGoogleはEU圏で独禁法違反の疑いで訴訟されるなど、完全にウェルカムではないわけですが。それはまた別の次元のお話ということで。

海外に出て行くかどうかは別としても、仮想的に海外に出ようとしたときに、その国の人たちからも「是非来てよ」と言っていただけるような社会性のあるミッションを持っているかどうか?という点は大事な気がします。

上場し社会的公器レベルを目指すなら定めておきたいMTP

全ての会社が上場して公開企業になる必要はないと思いますし、スモールビジネスとしてやっていくことも否定しません。

もし、上場して社会の公器となるようなレベルの会社を創ることを目指すのであれば、MTPを意識してみると良いでしょう。

MTPとは、Massive Transformative Purposeの略で、桁違いな成長をする飛躍型組織が共通してもっている「野心的な変革目標」のことです。

上記で整理したミッション、ビジョン、バリューにおける、ミッション(社会ビジョンに近い)にあたるものですが、Massive Transformative(大規模に変革させる何か)である必要があるのです。

参考書として下記でも紹介している「シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法」の中で、MTPを掲げる組織の事例が数多く紹介されていますので参考になると思います。

素晴らしいミッション・経営理念を持った会社リスト

素晴らしいミッションの例として外せないのはGoogleでしょう。Googleについてまず触れた上で、あとの9社については日本の会社を紹介します。(敬称略とさせていただきます)

伝統的な大企業の中にも素晴らしいミッションをもった会社はあると思いますが、どうしても巨大化するとあたりさわりがないものになりやすいので、20年以内に設立された新興企業を中心に素晴らしいなと思えるミッションの会社をピックアップしてみました。

※ちなみにGoogleも設立から20年経っていません。

Google

1998年創業。持株会社化したAlphabet Inc.は2017年には時価総額世界2位に。世界最大規模のインターネットサービス会社。世界中の情報を整理するというまさにGoogleの活動そのものが表現されています。

また、十分にMassiveでTransformativeなPurposeとなっているのがおわかりいただけるかと思います。

Googleの使命は世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです。
https://www.google.co.jp/about/

エムスリー

2000年以降の創業の会社で国内唯一の時価総額1兆円超(2017年6月時点)の企業。製薬マーケティングからスタートし、治験領域、創薬、ゲノム、病院領域まで含めた医療領域のイノベータ企業。長生きする人を増やすという面と、医療コストの削減という二つの方向にコミットしています。

これほど具体的で明確に鋭いにも関わらず、事業内容を過度に狭くしすぎていない、という素晴らしいミッションだなと思いました。

「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を
一人でも増やし、不必要な医療コストを一円でも減らすこと」
https://corporate.m3.com/corporate/vision/

スタートトゥデイ

2000年創業で、時価総額9,000億円台(2017年6月時点)の企業。1兆円まで時間の問題でしょう。もともとアパレルECプラットフォームという立ち位置ですが、今後自社のプライベートブランドも準備していますのでさらなる飛躍が見込まれます。

ファーストリテイリングの「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」にも通じるシンプルさですが、スタートトゥデイの方がよりロックでカジュアルな感じがして、同社の社風・キャラクターをよく現している気がします。

世界中をカッコよく、
世界中に笑顔を。
https://www.starttoday.jp/

カカクコム

2000年創業で、2017年3月期は売上450億円、営業利益211億円という超高収益企業。価格.comをはじめ、食べログも運営。

こちらもユーザー本位という言葉や生活者視点という言葉があり、実際のサービスとの整合性のとれた明確さがあって素晴らしい経営理念だなと思いました。

「ユーザー本位の価値あるサービスを創出しつづける」
生活者視点の新しい価値を提供して、日々の生活を豊かにhttp://corporate.kakaku.com/company/policy

エス・エム・エス

2003年創業の高成長・高利益企業。医療・介護領域を中心に人材紹介・求人を中心に情報インフラ事業を展開。

高齢社会に適した情報インフラという切り口が明確で鋭く、でも事業ドメインを狭めすぎない、拡張性を持っているという点で、こちらも完成度が高いと思います。

高齢社会に適した 情報インフラを構築することで
価値を創造し社会に貢献し続ける
http://www.bm-sms.co.jp/company/philosophy/

LIFULL

不動産情報サイトHOME’S(現・LIFULL HOME’S)で有名(旧社名:ネクスト)です。情報の非対称性をなくすために、不動産物件掲載数で国内首位になり、さらには海外M&Aでグローバルにも進出。

井上代表の創業ストーリーからもわかるように、まさに起業の原点から一貫して理念を大事にされた経営をしていると思います。

常に革進することで、より多くの人々が心からの
「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る
http://lifull.com/company/

ユーグレナ

ミドリムシで有名なユーグレナ。機能性食品と化粧品のみならず、バイオ燃料化、飼料化にも取り組み、まさに人の健康だけじゃなく、地球の健康にも貢献しようという挑戦がシンプルに表現された経営理念だと思います。

人と地球を健康にする
http://www.euglena.jp/about/vision/

ユーザベース

2008年創業で2016年にマザーズ上場。BtoB向けの情報プラットフォームSPEEDAとBtoC向けの経済ニュースプラットフォームNewsPicksを展開。

事業内容とミッションがダイレクトにつながっていて、シンプルで世界にも通用するミッションだと思いました。実際に海外事業強化しているようです。

経済情報で、世界をかえる
あらゆる経済情報を人とテクノロジーの力で整理・分析・創出し、ビジネスパーソンの生産性を高め、創造性を解放する。 私たちは、世界中で愛される経済情報インフラをつくり、世界中の意思決定を支え、世界をかえる。
http://www.uzabase.com/company/#company-sec2

カヤック

面白法人カヤックとして有名な同社。元々クライアントワーク(受託制作)が強いイメージでしたが、ソーシャルゲーム事業が伸びて売上の過半以上を占めています。

サイト上には経営理念に関する解説が書いていますが、ここまで丁寧に解説している会社は他にないのではないでしょうか。

同社のサイト上には、いい経営理念の定義と、他社の経営理念というコンテンツもあり、とても勉強になります。

「つくる人を増やす」
https://www.kayac.com/vision/vision

スマイルズ

Soup Stock Tokyoでお馴染みの会社。他にもネクタイブランドのgiraffeやセレクトリサイクルショップのPASS THE BATTONなど複数事業を展開しています。「慌しい日々の中に見落とされている当たり前のことに、新しい価値を見出し、それを丁寧に磨きあげて、ひとりでも多くの方にお届けしたい」という想いがこもっているそうです。

遠山社長のメッセージは嫉妬するぐらいカッコいいなといつも思います。

「生活価値の拡充」
http://www.smiles.co.jp/company/#/important2

最強教科書はこれだ!経営理念を作る際に読みたい厳選書籍4冊

ミッション、ビジョンなどを考えたり、経営理念を作る方法を知るためにも、是非読んでほしいおすすめの本が以下の4冊です。

シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法

シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法

シリコンバレーにある最高峰の教育機関・シンギュラリティ大学が解き明かす、飛躍的に成長する企業の条件について書かれた本です。上述した、MTP(Massive Transformative Purpose)の重要性について書かれています。

シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法 | Kindle版ですぐ読めます | 楽天で買う

本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50

本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50

原題は「Grow by Jim Stengel」。P&Gの伝説的マーケターだったジム・ステンゲルの著書。急成長するブランドに共通するのは、下記の5つの「人々の生活をより良いものにする」ことに関わる要素があると言います。(喜びを感じさせる/結びつく事を助ける/探求心を刺激する/誇りをかき立てる/社会に影響を及ぼす)

P&Gのマーケターが書いたマーケティングの本でしょ?と侮るなかれ、です。経営トップ・起業家が考えるべき最上位の経営理念・自社の存在意義を考える上で、最良の書となると思います。

本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50 | Kindle版ですぐ読めます | 楽天で買う

誰かに教えたくなる世界一流企業のキャッチフレーズ

誰かに教えたくなる世界一流企業のキャッチフレーズ

すぐに手に取れる本棚に置いておきたい1冊です。世界の企業のキャッチフレーズ(スローガン)をまとめた本です。英語と日本語訳の両方があるので、言い回しや表現の参考になると思います。

経営理念の言語化は言葉のセンス勝負なところがありますが、言葉のセンスは一定量の良質なインプットで磨けると思います。良質なインプットのためにこの本はおすすめです。

誰かに教えたくなる世界一流企業のキャッチフレーズ | 楽天で買う

やりたいことをやるというビジネスモデル―PASS THE BATONの軌跡

やりたいことをやるというビジネスモデル―PASS THE BATONの軌跡

上記の経営理念が素晴らしい会社でも紹介したスマイルズの遠山正道代表の著書です。本当にこの本は、かっこよくて文章がそもそもカッコいいですし、嫉妬します。どうやったらこんなセンスのある人になれるのかと絶望しそうですが、まずは一流に触れるところから、ということで是非ご一読を。

やりたいことをやるというビジネスモデル―PASS THE BATONの軌跡 | 楽天で買う

上記内容が、真剣に自分たちの提供価値を考えたり、より良い経営理念・ブランド理念を作る参考になればうれしく思います。

(この記事の著者プロフィール)
伊藤 豊

スローガン株式会社 代表取締役社長
東京大学文学部行動文化学科(心理学)卒業。2000年日本アイ・ビー・エムに入社。2005年スローガンを創業。創業から11年にわたり新産業・イノベーション領域の採用支援を中心に事業を展開。2015年からシード期のベンチャー投資活動も実施し20社以上に投資。

経営理念の作り方。ミッション、ビジョン、バリュー

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です